当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大懸念や雇用情勢の悪化により、景気の減速感が強まるなか、生産や輸出を中心に持ち直しの動きが見られ、企業収益においても非製造業では弱さが見られるものの、総じて見れば持ち直しております。また、海外経済におきましては米国等を中心に回復しているものの、米中貿易摩擦の激化やウクライナ情勢などの地政学的リスクの懸念もあり、先行きは不透明感が高まっております。

 当鉄鋼流通加工業界におきましては、オリンピック関連投資と首都圏の再開発案件の端境期となり鋼材の荷動きは低迷しているものの、一昨年12月より急騰したスクラップ価格は何度か踊り場を迎えつつも着実に上昇し、現状も高値圏で推移しております。また、鉄鉱石や石炭等の資源価格は急速に上昇しており、更にウクライナ情勢が世界の資源価格の不安定化に拍車をかけております。このような状況から、国内鉄鋼メーカーは繰り返し製品の値上げを発表しており、自動車産業の一時的な生産の回復に加え、低燃費船舶の需要増加から造船業も急回復しており、限られた鉄源の配分から、建材向け製品への供給量は一時大幅に削減されました。これらから鋼材の出荷量は伸び悩んでいるものの、鋼材価格は急速な上昇となりました。

 このような環境下にありまして当社グループは、各地域において、地道な営業活動により販売エリアの拡大・シェアアップを図っておりますが、販売先でありますゼネコンやファブリケーターは、大型物件等の工期の長い案件につきましては、スケジュールに沿ってある程度の仕事量は確保しているものの、地方の中小物件等につきましては設備投資の中止や延期等から仕事量は減少しております。このような状況から出荷量は低迷しているものの、国内鉄鋼メーカーからの供給量も減っていた事から、市中在庫はタイトな状況が続いておりましたが、それらについても徐々に解消に向かいつつあります。

 これらから鋼材の販売・加工事業につきましては、販売量は前年同期を若干下回る結果となりましたが、販売単価につきましては大幅に上昇している事から、売上高は前年同期を上回る結果となりました。

 なお、鉄骨工事請負事業は、民間設備投資の回復には力強さがなく、鋼材の値上がり等もあり受注活動は厳しさを増しております。工事売上高につきましては、中小物件は完成物件数及び売上金額共に増加した事に加え、大型物件の売上高も進捗物件数も回復しつつあり進捗も進み大幅な増加となりました。これらの結果から当連結会計年度の売上高は84,578百万円(前年同期比24.8%増)となりました。

 収益面におきましては、鋼材の販売・加工事業は、販売量の減少はあったものの、国内鋼材市況は急速に上昇した事から、収益率は大幅に改善いたしました。鉄骨工事請負事業は、売上高の増加に加えて、個別工事の収益性についても概ね堅調に推移した事から収益確保となりました。これらの結果から当連結会計年度の営業利益は6,861百万円(前年同期比301.4%増)となりました。また、営業外損益につきましては、一部連結子会社の退職金規程の整備に伴う退職給付費用118百万円の計上等により経常利益は6,800百万円(前年同期比271.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,277百万円(前年同期比269.3%増)となりました。

鋼材の販売・加工事業

 鋼材の販売・加工事業は、建築関連の民間設備投資の回復には力強さがなく、このところ弱含みで推移しております。特に地方においては新規物件の発生も減少しており、鋼材需要は弱く、荷動きも低迷しております。このような状況の中、販売量は前年同期を若干下回る結果となりましたが、売上高は国内鉄鋼メーカーの相次ぐ値上げ発表から、鋼材市況も呼応し、販売単価は月を追うごとに上昇した事から、前年同期を大幅に上回る結果となりました。

 品種別に見ますと、当社主力のH形鋼は従来からの建築向けには概ね堅調に推移したものの、土木向けにつきましては販売量が大幅に前年同期を下回る結果となりました。その他条鋼につきましては、ホットコイルの品不足等から大手軽量形鋼メーカーは生産調整をした事などにより、自社製品でありますC形鋼、カクパイプが大幅に増加した事に加え、アングル等も堅調に推移しました。しかしながら、H形鋼の減少を補うことはできず条鋼類の販売量は前年同期を若干下回る結果となりましたが、販売金額は価格上昇により大幅な増加となりました。また、鋼板類は、建築向けの切板及び切断用母材等は大幅に増加しましたが、土木向けの敷板等が大幅に減少した事に加えて、当社にて製造販売をしている合成スラブ用デッキとフラットデッキ等は一時出荷量が低迷しておりましたが、徐々に回復しており、出荷量は前年同期並となり販売金額は増加となりました。これらの結果、販売量は前年同期を下回る結果となりましたが、販売金額は増加となりました。鋼管類は、在庫出荷のロール成形コラム及び物件対応のプレス成形コラム共に堅調に推移した事に加えて、パイプ類も好調だった事から、販売量は前年同期を上回り、販売金額はコラムの価格上昇もあり大幅な増加となりました。以上の結果から、売上高は66,652百万円(前年同期比20.3%増)、セグメント利益は鋼材市況の急騰を受け、収益率は急速に改善した事から6,554百万円(前年同期比383.9%増)となりました。

関東工場
拡大
関東工場
H形鋼加工ライン
拡大
H形鋼加工ライン

鉄骨工事請負事業

 鉄骨工事請負事業は、民間設備投資は持ち直しに力強さがなく、首都圏を中心とした再開発や大型物件につきましては、オリンピックの開催延期に伴い若干の工程変更等はあったものの、総じて計画通りに進むものと考えられますが、地方の中小物件等については中止や延期等もあり、受注状況は厳しさを増しております。売上高につきましては、中小物件は多くの物件が完成を迎え売上高が増加した事に加え、大型物件はオリンピック後の再開発物件等が動き出しており、進捗物件数も回復してまいりました。これらの結果、売上高は16,959百万円(前年同期比39.9%増)となりました。また、収益につきましては、引き続き工事管理部門の強化や鉄骨加工子会社の原価低減は進めているものの、一部工事において外注費の増加などがあり、セグメント利益は1,033百万円(前年同期比0.3%減)となりました。

建築工事現場
拡大
建築工事現場
鉄骨製品
拡大
鉄骨製品

その他の事業

 その他は、従来の運送業及び倉庫業に加え、当連結会計年度の期首より機械販売業1社が連結範囲に加わりました。運送業についてはグループ内の輸送が減少する中、グループ外の鉄骨製品輸送を積極的に行った事から売上高は前年同期を上回る結果となりました。また、倉庫業につきましては昨年6月末日をもって事業を停止しましたが、機械販売業も堅調に推移したことから売上高は966百万円(前年同期比281.0%増)、セグメント利益は284百万円(前年同期比307.1%増)となりました。

運送事業
拡大
運送事業